7月7日は 星に、願いを。













七夕物語













 昔々あるところに、牽牛デューラという顔だけはいいものの、それはそれはイイ性格した青年と、織姫ガイズと言う可愛いけれど比類なく不幸な少年がいました。

 二人の物凄く一方的な恋愛模様は有名で、周囲で知らぬものは居ないほどでした。
 時折中庭なんぞで二人のとんでもない光景を目にしてしまう事も往々にしてありましたが、そんな時も周囲は生暖かくスルーするという形で二人を見守っていました。



 さてさて。あるとき牽牛デューラがあまりに仕事をしないので、そして織姫ガイズもあまりに仕事を出来ないので(誰の所為かは推して知るべし)とうとう普段は温和な天帝シルヴェスの怒りに触れ、二人は天の川の端と端に引き離されてしまいました。


 牽牛デューラは嘆き哀し…む前に怒り狂いました。ですが天の川の流れはとても早く、泳いで渡れそうもありません。一度ボルアネを流してみたところ、一瞬で下流へと押し流されていったので、それは実証済みです。

 ならば橋を掛けてみてはどうだろう。そう思った牽牛デューラは、近場を暢気にほたほた歩いていた赤毛のカササギさんを捕まえました。


「おい、お前。俺とガイズの愛の掛け橋になれ!!
「!?」


 エライもんにとっ捕まってしまい、強面ながら善良なカササギさんは暴れに暴れましたが、残念ながら逃れる事は叶いませんでした。

 さて。カササギさんを犠牲に…いえ、助けを借りて、牽牛デューラは意気揚揚と天の川を渡ろうとしました。ですが、赤毛のカササギさんだけでは、天の川の端まで橋を届かせることが出来ません。牽牛デューラは困ってしまいました。

 その時視界の端を、目が3の字になったカササギが一羽、『メガネ、メガネ』と言いながら歩いていくのが見えました。

 牽牛デューラはニヤリと笑うと、足元に落ちていたメガネを拾い上げ、そのメガネカササギにも橋の一部となるよう、要求しました。
 カササギは抵抗しましたが、大事なメガネを人質にとられていてはどうしようもありません。だってあのメガネが無いと、いつまでたっても目が3のままなのです。



 カササギは泣く泣く、この横暴な牽牛のために愛の掛け橋となることを承諾しました。








 さてその頃、織姫ガイズは牽牛デューラから逃れる事も出来、毎日せっせと靴を作っていました。

 仕事は嫌いでしたが、時々仲間が様子を見に遊びに来てくれます。織姫ガイズは幸せでした。




 その日も、ノックの音が聞こえたので、織姫ガイズはまた友人の誰かが来てくれたのかといそいそと扉を開けました。


 そして、ドアの前に立っている金髪で全身ずぶ濡れの青年の姿を見るや否や、直ちに扉を閉めようとしました。

 しかし、ここまで死ぬ気でやってきた牽牛デューラがそんなことさせるはずもありません。
閉まりかけたドアに足を差し入れ(悪徳セールスマンのお約束)、無理矢理家の中に上がりこんできました。


「ようやく逢えたな…ガイズ」
「呼んでません!呼んでません!帰って下さい!
「まあ、そう照れるな」
「照れてねぇし!」

 織姫ガイズはじりじりと後ろに下がって逃げようとしますが、程なくその背中は壁にぶつかってしまいました。

「いや…ちょっと…ホントに、待っ…」
「淋しかっただろう…?」
「ンなわけ……っん――っ!!」

 黙れ、とばかりに牽牛デューラは織姫ガイズの唇をふさぎました。大した早業です。

「嫌だ!嫌だ!やだやだぁぁっ!!」

 暴れながら織姫ガイズはぽろぽろ涙をこぼしました。
 …尤も、その涙の理由が変わるまでに、大した時間はかかりませんでしたが。


 そして愛らしい織姫の流した涙は地上に降り注いで、大地を潤す雨となりました。











「…だから7月7日は雨が多いんだ」
「…へぇ…」

 自慢げに語る上司に、ジャーヴィーはそう答える事しか出来なかった。
 記録、『1へぇ』。

 その後も主任の『夢見がち七夕物語』は留まる事無く続いていく。

 ジャーヴィーは笹を抱えたシルヴェスと顔を見合わせ、はぁっと溜息をついた。
 そして二人一緒に、折り紙で作った短冊をこっそり笹に吊るしてやる。



 曰く。







『マトモな上司に恵まれますように』







 今年の七夕は晴れだったけれど、星は願いを聞いてくれるだろうか?



















END













確か去年の七夕企画。
メガネカササギが大人気でした。何故か。












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